ライフスタイル提案

桃山商事と考える“脱毛”問題。自由でゆるやかなグラデーションを目指して


痛い。面倒。肌に負担をかける……。 皆はどうしているの? 本当にムダなの? 謎多き脱毛問題について、恋バナ収集ユニット桃山商事が男性・女性それぞれの視点から徹底討論。

桃山商事
清田隆之さん、森田雄飛さん、ワッコさんの3人からなる恋バナ収集ユニット。「失恋ホスト」としてこれまでにこれまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信。著書に『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』、『生き抜くための恋愛相談』など。新刊『どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか』(すべてイースト・プレス)など。が2021年1月に発売。

「女子=つるつる」という幻想

清田 脱毛って男女差が大きくて、めちゃくちゃジェンダーが絡んでいる問題ではないかと感じていて。

森田 そうだよね。知識も意識も、女性のほうが圧倒的に高いと思うし。

ワッコ 昔、男友達から「ワッコも腕毛とか生えるの?」って真顔で聞かれたことがあります。多分、女は元から毛が生えてないと思ってたんでしょうね(笑)。

清田 でもそれ、俺には笑う資格ないかも……。というのも、中学高校と男子校に通っていて、思春期にほとんど女子と接点がなかったというのもあり、女子はみんなつるつるしてて、脇毛もスネ毛も生えない生き物だって半ば本気で思い込んでいた。

ワッコ やばっ。いくら「接点ない」って言っても、家には妹さんもいたじゃないですか!

清田 妹は6歳下で、ずっと子どもだと思ってたからよくわからなかったのよ。今思えばお母さんが使っていたであろう剃刀がお風呂にあったけど、用途を想像したこともなかったから、それで普通にアンダーのヘアーを剃ってて……。

ワッコ 清田さんは前に「自分に毛が生えたことがショックで泣きながら剃ってた」って言っていたけど、まさにその時代の話か……!まさか母親のシェーバーで剃ってたとは(笑)。森田さんはどうでしたか?

森田 年の近い姉と妹がいるので、清田のような思い込みはなかったと思う。でも高校生のとき、付き合っていた彼女に「腕、つるつるしてるね」って言ったら「いや、剃ってるから」「普通に大変だし」と返されたことがあり、つるつるの背景にある労力まで想像していなかった部分はあるかも。

ワッコ ほんと、まさにその通りで、最初から生えてないわけじゃなく、いろいろなケアをしてようやくつるつるになれるわけですよ。わたしは体質的に毛が薄いほうだと思いますが、それでも脱毛サロンに行ってましたからね。

清田 無知すぎて恐縮だけど、脱毛って何するの? レーザー的なものを使ってるイメージはあるんだけど……。

ワッコ あれを肌に当て、毛根に働きかけて毛を生えにくくしていくんです。永久脱毛と言っても一回やったら永遠につるつるになるわけではなく、何度も通わなきゃいけないのでなかなか大変で。

森田 しかも、あのレーザーってめちゃくちゃ痛いんだよね?

ワッコ そうなんですよ!痛すぎるから施術の前にいったん冷凍マグロにされるんですよ。

清田 ど、どういうこと!?

ワッコ 麻酔的なあれで、保冷剤のようなものを全身に当てられるんです。しかもその状態で30分とか放置されて。部屋も冷房がガンガンに効いてて、凍え死ぬかってレベルでキンキンに冷やされたあと、今度は施術のために全身に線を引かれるわけです。こう、ブロック肉のようにされて順番に光を当てていくという。

森田 冷凍マグロからのブロック肉(笑)。

ワッコ ちなみに美容皮膚科でやる「医療脱毛」というのもあって、光の威力が何倍も強いから短期間で終わるんですが、あまりに痛すぎて拷問感がすごくて、わたしは数回通って脱落してしまいました。

毛の処理は納税のようなもの

森田 毛にまつわる恋バナは、過去に桃山商事でも何度か紹介したことがあったよね。例えば我々の著書『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』には「自分史上最高のエロ」と題した章があって、人生で最も興奮した瞬間の話をいろんな人から聞き集めたんだけど、そこに「女性のムダ毛にめちゃくちゃ興奮した」という男性のエピソードがあって。

清田 会社の同僚女性とご飯したとき、話が盛り上がってそのまま家で飲み直すことになった。そして色っぽい雰囲気になり、お互い服を脱いだら彼女の足には明らかに処理していない感じで毛が生えていて、男性はそのシチュエーションに欲情した……という話だったよね。

森田 彼はその毛を見て、「元々そういうつもりはなかったんだな」と思い、即興的に盛り上がったムードに気持ちが高まったと語っていた。

ワッコ その“ジャズ感”がよかったという。女のムダ毛に萎えるかと思いきや、その場で高まった彼女の性欲に対してエロみを感じたという点が素敵なエピソードでしたよね。わたしは逆に、念入りに処理して男性とのデートに臨んだのに、何にも起こらずへこむ……みたいなことが何度もありました(笑)。

清田 毛に高まりを感じたのは興味深いし、確かにいい話でもあるんだけど、一方でその背景には「女はムダ毛の処理をするものだ」という規範意識みたいなものが見え隠れしているような気もする。

森田 そうなんだよね。「普通は剃るよね」という前提があるから成り立つ話ではある。

清田 その感覚を引き延ばせば「女は常につるつるにしておくべし」みたいな社会圧につながっていくようにも思え、そうなるとこれは完全にジェンダーの呪縛ではないかと感じる。

ワッコ うーん。わたしが女の意見を代表してるわけじゃないとは思いますが、個人的には呪いとか圧力みたいなものを受けてる意識はあまりないんですよね。やらされてる感覚というより、必修科目だからやるのが当然、みたいな。納税みたいかものと一緒というか。

森田 毛の処理は納税(笑)。

ワッコ もちろん部位によって違いますが、見える部分は特にそうですね。ちなみにわたしの肌感覚ではほとんど全員と言えるくらいやってるような気がします。

清田 てことは、これまで付き合ってきた人も、普段楽しくお茶してる女友達も、みんな毛の処理をしてるってことだよね。それはあまり意識したことなかったかも……。

ワッコ かといって、「面倒くさいからやらない」という選択肢があるかというとそうではないし、積極的に毛の処理をやりたい気持ちがあるわけでもないので、知らず知らずの内に圧力を受けている部分は確かにあるのかもしれません。

清田 最近は女性にプレッシャーをかけるような美容広告が批判されるようになっているし、ミュージシャンのCHAIも「抜けるがままに/生えるがままに/水戸毛根の言う通り」と歌っているように、毛が生えてたって普通だよねという流れもある。剃刀メーカーの貝印が広告に出した「ムダかどうかは、自分で決める」というコピーも話題になったよね。

森田 よく考えたら「ムダ毛」ってかなり暴力的な言葉だよな……。

ワッコ 確かに、身体の一部なのに邪魔者扱いですもんね。逆にあってありがたいのって、髪の毛、眉毛、まつ毛の3つくらいですもんね。それ以外はすべてムダという……恐ろしい話だな。

男性には動機づけが必要?

清田 逆に男の毛ってどう見えてるの? スネ毛とか、人によっては胸毛とか、それこそ生えるがままにしてる男の人が多数派だと思うんだけど。

ワッコ そういえば、昔付き合ってた人から「俺の乳毛をどう思う?」って聞かれたこともありました(笑)。そのときは傷つけないよう「別に嫌ではない」みたいな答え方をしたんですが、本音を言えば、できればないほうが見た目的には好みかなって。

清田 確かに、清潔感とかにも関係してくるもんね。

ワッコ でも、男性で毛の処理をしている人って大分少ないように感じるのですが……。ちなみに二人は何か処理とかしてるんですか?

清田 興味はあるんだけど、ほとんどやったことない。元から体毛が薄いのもあって、そこにあぐらをかいてるのも正直あるかも……。

ワッコ “ナチュラルボーン毛が薄い勢”はそうなりがちですよね。

森田 俺は一か月前に脱毛デビューしました。スムーズスキンさんにいただいた光脱毛機で足もつるつるになったし。ほら、見てよ。

清田 うおっ、ホントだ!

森田 普段からよく短パンを履くのもあって、ここ2~3年くらいずっと興味があったんだよね。前に妻から「森田さんはかわいい服を好んで着てるし、体型維持もすごく気にする人だけど、足の毛とか脇毛は無頓着なんだね」と言われたことがあり、それ以来ずっと気になってて。

ワッコ 確かに短パン好きのイメージはあったけど、そんなことを思っていたのは意外です。

森田 どんなにかわいい服を着てても、足の毛があると何となく台なしになっちゃうような気がしていて、処理したいなとは思っていた。その一方で剃ってるってバレるのが恥ずかしいという思いも正直あって。

清田 男なのに剃ってるんだ的な?

森田 それもあるし、あと年齢もあるかも。「40にもなってまだモテようとしてるの?」みたいな目線が怖い。

清田 なるほど。そのあたりは男にかかってるジェンダーの呪縛と関係ありそう。

森田 でも脱毛にトライしてみてすごくよかった。短パン履くのが楽しくなったし、元からつるつるの脇や足を希望していた妻にも喜ばれた。あと布団とかお風呂に入ったときにめっちゃ気持ちいいという発見もあった(笑)。

清田 いいな、俺もやってみようかな。

森田 ジェンダーの話で言うと、男性には「毛を剃るべし」みたいな規範はないけど、そういう外圧がないだけに、実際に脱毛を決行するためには割と強いモチベーションが必要な気がする。「キレイにしたい」とか「パートナーの希望に応えたい」とか、一歩踏み出すための動機づけが必要になるっていうのは男性特有かもね。

清田 女の人は毛の処理をしないと無頓着な人だと思われてしまう一方、我々男は気をつかってるだけで褒められたりもする。その不均衡は是正されるべき問題ではあるけれど……男性が身体ケアの楽しさや喜びを知ること自体はすごくいいことだなって思った。

ワッコ 女性にとっては、のしかかる有形無形のプレッシャーが緩和され、いろいろ楽になれたらいいですよね。
「美意識高い/女子力低い」というオールオアナッシングではなく、グラデーション的に、気になるところは処理して好きなとこはそのままにして、みたいな、もっと自由な感じになっていったらいいなって。

清田 そういう世の中になったら楽しいよね。自分も手始めにスネ毛からトライしてみようと思います!

TEXT BY TAKAYUKI KIYOTA 
ILLUSTRATION BY KENRO SHINCHI